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株/投資/ヘッジファンド/きまぐれぽんた

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金融の新しい流れ


9月1日付の日本経済新聞朝刊で、金融庁が従来の方針から完全に方向転換
する形で、当局の判断で独自に公的資金転換優先株を普通株に転換・売却できる
ような新ルールを検討中と報じられた。ほとんどの銀行にとって重要な新情報は、
政府が公的資金転換優先株を普通株に転換した後、市場で売却できる点にある
ことである。銀行側の意図なくして、政府がいわゆる一機関投資家のように、
自身の判断で売却することができるのだ。従来は金融庁が銀行に「一定の水準の
利益」を支払うよう要請することが前提であったが、政府と銀行との関係により、
とくにそこへの強制力はなかった。同記事は、金融庁が従来のスタンスを超える
形で、政府の判断で転換・売却可能とする可能性を示唆しているといえるだろう。

主要行の公的資金転換優先株の本質的価値は、2005年8月31日終値ベースで
合計7兆1,000億円で、このまま優先株が現株に転換されていくとすると、計算上
24.1%の希薄化につながる可能性がある。だが、実際のところ、日経の記事に
示された通りには恐らくいかない、もしくはできないのではないかと考えている。
日経が報じた新ルールには幾つかの問題点があることはなかなか皆さん、気付いて
いないだろうな。東京都が銀行に対して導入した外形標準課税や旧住専の不良
債権処理を巡ってみずほに課せられた追徴課税と似た結果を辿ることも十分予想
されるからあまり生半可なことはできないはずだしね。

第一に、この新ルールは従来のルールからの完全な方向転換であり、公的資金
転換優先株に付随する転換価格上方修正条項の趣旨と相反することとなることが
挙げられる。文章が長くてややこしいかもしれないが、要はこういうこと。日経新聞は
金融庁が公的資金を注入した際にこの優先株を市場で売却することによって得る
差益を事実上想定していなかったと述べているが、これは明らかに間違っている。
もし、株価上昇を全く想定していなかったのであれば、そもそも優先株の中に転換
価額上方修正条項が存在するはずがないわけだから。今回の報道がもし事実で
あれば、事後的なルールの著しい変更であり、規制の一貫性の観点からも重大な
影響が及ぶことになろう。どこまでが本当なのか、日経さんの深読みなのか、
それも興味深い。

第二に、この新ルールの下では、法の下での公平性に反することとなる。一部の
銀行が他の銀行よりも遥かに大きな利益を払わなければならなくなるばかりでなく、
最終的に政府にほとんど利益をもたらさない銀行も出てくることになるのだから。

最後に、日経新聞には、金融庁の新ルール導入の狙いが国民負担をできる限り
回避することにあると報じられている。しかし、これは特定の銀行で生じた損失の
負担を他の銀行に補填させることを意味しているように思えるのだがどうだろう。
例えば、ダイエーが税金を支払わなかったために、ヨーカドーに特別課税を
行うようなものである。本当にこれでいいのだろうか。新生銀行に関しては、過去に
多額の国民負担が生じており、政府に利益をもたらすため、新ルールに一貫性が
認められることも考えられる。同社経営陣は最近、政府に対し額面以上の
プレミアムを払う意志のないことを強調している。

影響を受ける銀行の株式は売られることになろうが、今のところ積極的に買いたいと
思わないし、思えない。万が一今回の報道が本当に起こり、銀行株がマーケットで
大量に売られるようなことになれば、新ルールも変わるだろう。売りが一段落する
のを待つ構えである。


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